育成就労制度の外部監査を適切に実施しなかったらどうなる?監理支援機関が注意すべきリスク

育成就労制度では、監理支援機関は外部監査人を選任し、役員の職務執行について外部監査を受ける体制を整えることが、許可基準として求められています(育成就労法第25条、同法施行規則第47条)。
技能実習制度では「指定外部役員を置く」か「外部監査の措置を講じる」かを選択できましたが、育成就労制度ではこの仕組みが改められ、外部監査人を選任することが必要となりました。つまり、外部監査人を確保できなければ、そもそも監理支援機関の許可を受けることができません。
そのため、監理支援機関では「外部監査人を選任しておけば大丈夫」と考えるのではなく、実際に必要な外部監査を適切に実施し、その結果を記録・報告できる体制を整えておくことが重要です。
では、外部監査を実施しなかった場合や、形式的な監査にとどまっていた場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
1.外部監査人を選任するだけでは十分ではない
育成就労制度における外部監査は、監理支援機関の業務が適切に行われているかを外部の立場から確認するための重要な仕組みです。
そのため、
「外部監査人とは契約している」
「外部監査人を選任している」
というだけで、必要な対応がすべて完了するわけではありません。
規則で定められた外部監査等を実際に実施し、その結果を適切に記録・報告できる状態にしておく必要があります。
2.外部監査等における2つの確認方法
施行規則では、外部監査人による確認について、主に次の2つの方法が定められています。
① 業務遂行状況の確認(3か月に1回以上・各事業所)
監理支援事業を行う各事業所につき3か月に1回以上の頻度で、責任役員および監理支援責任者から報告を受け、事業所の設備を確認し、帳簿書類その他の物件を閲覧する方法により、育成就労実施者に対する監査その他の業務が適正に実施されているかを確認します。
確認後は、その結果を記載した書類を監理支援機関に提出します。
② 同行による確認(年1回以上・各事業所)
監理支援機関が育成就労実施者に対して行う監査に、各事業所につき年1回以上同行し、その監査が適正に実施されているかを確認します。
こちらについても、確認結果を記載した書類を監理支援機関に提出します。
なお、同行による確認については、単に「事業年度内に1回実施すればよい」と考えるのではなく、前回の実施時期との間隔にも注意してスケジュールを管理することが重要です。
3.外部監査を適切に実施しないことで生じるリスク
上記を踏まえると、たとえば次のような状況では、外部監査等が本来の機能を果たしていない可能性があります。
外部監査を予定していたにもかかわらず実施していない
各事業所について、3か月に1回以上の業務遂行状況の確認や、年1回以上の同行による確認を実施していない
確認において、責任役員・監理支援責任者からの報告聴取、設備の確認、帳簿書類等の閲覧など、規則で定められた確認方法を十分に行っていない
確認結果を記載した書類の作成・提出・保管が適切に行われていない
外部監査で改善すべき事項が指摘されたにもかかわらず、必要な改善を行っていない
外部監査等の措置は、監理支援機関の許可基準の一つです。そのため、外部監査等に関する義務を適切に履行しておらず、許可基準に適合しない状態となった場合には、監理支援機関の許可に関する行政上の措置につながる可能性があります。
また、法令違反があり、監理支援事業の適正な運営を確保するために必要と認められる場合には、改善命令の対象となることもあります。
「監査を実施した」という事実だけではなく、何を確認し、どのような結果だったのかを説明できることが重要です。
4.外部監査の書類は「提出」と「備置き」の両方が求められる
外部監査に関する書類は、外部監査人から受け取って終わりではありません。制度上、次のような取扱いが求められます。
① 帳簿書類としての備置き
外部監査人による確認結果を記載した書類は、監理支援機関が事業所に備え置く帳簿書類に含まれます(育成就労法第41条、施行規則第70条)。
備置期間は、監理支援を行う育成就労実施者が行わせている育成就労の終了日から起算して1年間です。
② 事業報告書への添付
監理支援機関は、育成就労事業年度ごとに事業報告書を作成し、翌事業年度の5月31日までに機構へ提出しなければなりません。
この事業報告書には、報告年度における外部監査に関する書類の写しを添付する必要があります。
つまり、外部監査に関する書類は、事業報告書に添付して機構に提出することになります。
そのため、実施漏れや記録の不備は、年次の事業報告を行う際にも問題となり得る点を意識しておきたいところです。
なお、これらの書類は、要件を満たせば電磁的記録として作成・保存することもできます。電子データで管理する場合でも、必要なときに内容を確認・表示できる状態にしておくことが重要です。
5.「形式的な外部監査」にならないよう注意
外部監査で特に注意したいのが、監査そのものが形式的になってしまうことです。
たとえば、事業所を訪問して簡単な確認をしただけで「外部監査は実施済み」としてしまうケースです。
しかし、本来の外部監査は、単に事業所を訪問することが目的ではありません。
規則で定められた事項を確認し、問題があればその内容を把握し、必要に応じて改善につなげることが重要です。
また、後から実施状況を確認できるよう、監査日、確認事項、確認結果、指摘事項などを適切に記録しておくことも大切です。
6.監査記録の粒度にも注意
外部監査を実施していたとしても、記録が十分に残っていなければ、後から「どのような監査を行ったのか」を説明することが難しくなります。
「○月○日に監査を実施した」という記録だけではなく、
いつ実施したのか
どの事業所を対象としたのか
どちらの確認か(3か月に1回以上の業務遂行状況の確認/年1回以上の同行による確認)
どのような事項を確認したのか(報告聴取・設備確認・帳簿書類の閲覧の内容)
問題や指摘事項はあったのか
指摘事項があった場合、どのような対応をしたのか
といった情報を整理しておくことが重要です。
特に複数の事業所を設置している監理支援機関では、事業所ごとに監査状況を管理できる仕組みを作っておくと、監査漏れを防ぎやすくなります。
7.外部監査は「問題を見つけること」だけが目的ではない
外部監査というと、「監理支援機関のミスを探すもの」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、外部監査の重要な役割の一つは、業務上の問題や不備を早期に把握し、適切な対応につなげることです。
監理支援機関自身では気づきにくかった問題について、外部の視点から確認することで、改善のきっかけになる場合があります。
また、運用要領では、外部監査人が育成就労外国人の外部通報窓口としての役割を果たすことも望まれるとされています。
外部監査人には、監理支援機関の業務を外部から確認するだけでなく、育成就労外国人からの問題提起を受け止める役割も期待されています。
その意味でも、「問題がなかったから監査は意味がない」のではなく、「問題がないことを確認すること」や「問題を早期に発見すること」にも外部監査の意味があります。
8.外部監査人との契約内容も確認しておきましょう
外部監査を適切に実施するためには、監理支援機関と外部監査人との間で、あらかじめ業務内容や実施方法を明確にしておくことも重要です。
特に、次のような事項を契約書や覚書などで整理しておくとよいでしょう。
① 監査対象と実施頻度を明確にする
規則上、外部監査は「各事業所ごと」に、3か月に1回以上の業務遂行状況の確認と、年1回以上の同行による確認を行うこととされています。
事業所が複数ある場合には、どの事業所を対象とするのか、いつ、どのような確認を行うのかをあらかじめ整理しておくと、監査漏れを防ぎやすくなります。
② 確認結果の報告方法を明確にする
外部監査人は、確認結果を記載した書類を監理支援機関に提出することとされています。
事業報告書への添付を見据え、報告書の提出時期・記載項目・提出方法(書面か電磁的記録か)をあらかじめ決めておくことが実務上有効です。
③ 独立性に問題が生じた場合の対応を確認する
外部監査人には、監理支援機関や育成就労実施者との関係について、外部監査の公正が害されるおそれがないことが求められます。
運用要領では、監理支援機関が監理支援を行う育成就労実施者と顧問契約を結んでいる弁護士や、育成就労実施者から会費の支払を受けている法人などは、外部監査の公正が害されるおそれがある例として挙げられています。
一方で、監理支援機関自身と顧問契約を結んでいる弁護士等は、そのことのみをもって直ちに該当するものではないとされています。
受任後に新たな関係性が生じた場合や、公正性について疑義が生じた場合に備え、関係者への通知や契約上の対応方法についても、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
④ 講習の受講状況を確認する
外部監査人は、過去3年以内に、主務大臣が告示で定める外部監査人に対する講習を修了した者である必要があります(施行規則第47条)。
そのため、外部監査人を選任する監理支援機関側でも、講習の受講時期を確認しておくことが重要です。
なお、当分の間は、技能実習制度における監理責任者等講習を修了した者も、この講習を修了した者とみなされる経過措置が設けられています。
⑤ 法人が外部監査人となる場合は担当者を確認する
外部監査人は、個人だけでなく法人がなることもできます。
法人が外部監査人となる場合には、実際に監査を担当する「監査実施責任者」を明確にしておくことが重要です。
また、法人の場合、監査実施責任者について講習の受講状況が確認されるため、この点も事前に確認しておきましょう。
⑥ 氏名・法人名の公表への同意を確認する
外部監査人は、その氏名等を機構がインターネットにより公表することに同意している者である必要があります(施行規則第47条)。
法人が外部監査人となる場合には、法人としての公表への同意についても確認しておきましょう。
このように、外部監査人との契約は、単に「外部監査をお願いします」とするだけではなく、対象事業所、実施頻度、報告方法、担当者などを具体的に整理しておくことで、外部監査を継続的かつ適切に実施しやすくなります。
9.外部監査の実施スケジュールを事前に管理する
外部監査でありがちな問題の一つが、監査時期の管理です。
通常の業務が忙しくなると、「気がついたら前回の監査からかなり期間が空いていた」ということも考えられます。
そのため、「監査人を決めて終わり」ではなく、「次回の監査まで管理する」という考え方が重要です。
年間の監査予定をあらかじめ作成し、監理支援機関と外部監査人の双方でスケジュールを共有しておけば、監査漏れを防ぎやすくなります。

同行による確認については、単に年度末にまとめて実施すればよいと考えるのではなく、前回の実施時期との間隔にも注意してスケジュールを管理することが重要です。
10.まとめ
育成就労制度における外部監査は、外部監査人を選任するだけで完了するものではありません。
実際に必要な確認を行い、その結果を適切に記録・保管・報告し、必要な場合には改善につなげることが重要です。
特に、
「外部監査人は決まっているが、監査の具体的な運用方法までは決まっていない」
という監理支援機関は、早い段階で一度確認しておくとよいでしょう。
育成就労制度は2027年4月1日に施行され、監理支援機関の許可申請(施行日前申請)もすでに受付が始まっています。
外部監査についても、監査の実施時期、確認事項、記録方法、報告体制をあらかじめ整理し、早めに準備を進めておきましょう。
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OIL行政書士事務所
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岡山県・福山市を中心に対応しています。
※本コラムの制度内容は執筆時点で公表されている情報に基づいています。育成就労制度の運用や様式等は今後も主務省令・告示・運用要領の更新により変更される可能性があるため、最新情報は出入国在留管理庁・外国人技能実習機構(施行後は外国人育成就労機構)等の一次情報でご確認ください。
