育成就労制度の許可申請に伴う「事業所」の物理的要件まとめ。所在地、構造、設備、面積等について。

2027年4月1日に、技能実習制度に代わる新しい「育成就労制度」が施行される予定です。
これに伴い、現在の監理団体から「監理支援機関」への移行を検討している団体も多いのではないでしょうか。
監理支援機関の許可申請では、法人や役員、外部監査人などの要件だけでなく、実際に監理支援事業を行う「事業所」についても一定の要件が設けられています。
例えば、
事業所はどのくらいの広さが必要なのか
20㎡あれば問題ないのか
面談室は別に必要なのか
他の法人と同じ建物に入ってもよいのか
自宅を事業所として使用できるのか
育成就労実施場所からどの程度離れていてもよいのか
事業所には常に職員がいなければならないのか
監理支援責任者は事業所ごとに必要なのか
など、事務所を準備する段階で気になる点は少なくありません。
今回は、出入国在留管理庁の運用要領や外国人技能実習機構(OTIT)のFAQ等をもとに、監理支援機関側の「事業所」に求められる要件について整理します。
※本記事は2026年9月時点で公表されている資料をもとに作成しています。今後、運用要領やFAQ等が改訂される可能性がありますので、実際の申請時には最新の資料をご確認ください。
1.監理支援機関には「事業所」が必要
監理支援機関には、監理支援事業を適正に遂行する能力があることが求められています。
そのため、単に住所だけを置けばよいというものではなく、実際に監理支援事業を行うための事業所を適切に設置することが必要です。
監理支援事業を行う事業所については、
適切な広さがあること
事務機器等を設置できること
情報を適切に管理できること
来訪者に対応できること
相談者のプライバシーを保護できること
他の事業者の事業所等と混在していないこと
などが求められます。
つまり、単に「事務所として登記されているか」ではなく、実際に監理支援業務を行える環境が整っているかという点が重要になります。それぞれの詳細については、以降の章で順に見ていきます。
2.事業所の面積は「おおむね20㎡以上」
監理支援事業を行う事業所については、おおむね20㎡以上の面積が求められます。
ただし、ここで注意したいのは、
「20㎡あれば、それだけで要件を満たす」という意味ではない
ということです。
外国人技能実習機構の資料では、単に20㎡以上の面積が確保されているだけではなく、監理支援事業を行うために支障のないレイアウトが必要とされています。
具体的には、
事務機器の設置
情報管理
来訪者対応
相談対応
などを適切に行えるレイアウトであることが重要です。
例えば、物件全体が30㎡あったとしても、そのうち大部分が実際には使用されていない遊休スペースで、監理支援事業に使用している部分が20㎡未満である場合には、要件を満たさないと判断される可能性があります。
したがって、
「物件の登記面積が20㎡以上あるか」
だけではなく、
「監理支援事業を行うために実際に使用できるスペースが確保されているか」
という視点で確認することが重要です。
3.20㎡には何が含まれる?
では、「20㎡」の中には何が含まれるのでしょうか。
FAQでは、監理支援事業を行う事業所の面積について、
事務(執務)室
面談・相談スペース
など、監理支援事業のために使用する場所が対象とされています。
一方、
キッチン・給湯室
トイレ
浴室
などの面積は含まれません。
そのため、例えば、
物件全体:25㎡
トイレ・キッチン等:6㎡
実際に監理支援事業に使用できる部分:19㎡
という場合には、「物件全体が25㎡だから大丈夫」と単純に判断することはできません。
物件を選ぶ際には、実際に監理支援事業に使用できる面積を確認することが重要です。
4.面談・相談スペースは必要?
監理支援機関では、育成就労実施者や育成就労外国人等から相談を受けることがあります。
そのため、相談者のプライバシーを保護しながら相談に対応できるスペースを確保する必要があります。
ここで、
「20㎡とは別に、独立した面談室を用意しなければならないの?」
という疑問が出てくるかもしれません。
必ずしも、20㎡とは別に独立した部屋を用意しなければならないわけではありません。
監理支援事業所の中に、
個室
パーティション等で区分されたスペース
を設けることができます。
例えば、20㎡程度の事務所の一部を適切に区切り、相談スペースとして使用する方法も考えられます。
ただし、単に机と椅子を置いただけのオープンスペースではなく、相談者のプライバシーを保護しながら対応できる構造であることが重要です。
5.事業所内に面談スペースを設けられない場合
物件によっては、
「20㎡程度の事務所は確保できるが、面談スペースを設ける余裕がない」
というケースもあるでしょう。
このような場合、監理支援事業所とは別に、近隣の貸部屋等を確保する方法があります。
OTITのFAQでは、事業所内に面談スペースを設けられない場合には、近隣の貸部屋等を確保することが必要とされています。
その場合には、当該貸部屋について、
登記事項証明書
賃貸借契約書の写し
見取り図
写真
などの提出が必要となります。
つまり、
「事務所が狭いから面談できない」
という場合でも、適切な面談場所を別途確保することで対応できる場合があります。
6.事業所は他の法人と同じ建物でもよい?
これも事務所を探す際によくある疑問です。
例えば、
1階:別の会社
2階:監理支援機関
というように、同じ建物に複数の法人・事業者が入居するケースです。
この場合、他の法人や事業者が同じ建物に入居しているというだけで、直ちに監理支援事業所として認められないというわけではありません。
ただし、重要なのは監理支援事業所としての独立性です。
運用要領では、監理支援事業を行う事業所が、他の事業者の事業所等と混在せず、独立していることが外形上も分かる形で整備されていることが求められています。
例えば、
他の事業者の事務所の一部を間借りして監理支援事業所として使用する
といった形は問題となる可能性があります。
また、
他の事業者の事務所や作業場所を通過しなければ、監理支援事業所に入ることができない
という構造も、独立した事業所とは認めらない可能性があります。
したがって、同じ建物に他の法人が入居している場合には、
使用区画
出入口
動線
使用権限
実際の利用状況
などを確認し、監理支援事業所として独立していることが分かる状態にしておくことが重要です。
7.育成就労実施者の事業所と隣接している場合は?
監理支援事業所のすぐ隣に、育成就労実施者等の事業所がある場合には、さらに注意が必要です。
単に事業所として独立しているだけではなく、相談者のプライバシーを保護できる体制が必要になります。
例えば、
双方の事業所への入室動線を重ならないようにする
予約制で相談を受ける
近隣の貸部屋を確保する
といった措置が例として挙げられています。
これは、育成就労外国人が監理支援機関へ相談したことによって、受入れ企業等から不利益な取扱いを受けることを防ぐという観点からも重要です。
8.自宅を監理支援事業所にすることはできる?
「自宅の一室を監理支援事業所として使用したい」というケースも考えられます。
この点については、「自宅だから一律に認められない」と断定することはできません。
一方で、自宅を使用する場合には、監理支援事業所として求められる、
独立性
面積
レイアウト
情報管理
来訪者対応
プライバシー
などの要件を満たせるかを確認する必要があります。
また、育成就労制度上の要件とは別に、
賃貸借契約上の使用目的
マンション等の管理規約
建築基準法上の用途
都市計画法上の規制
消防上の問題
などが関係する場合があります。
そのため、
「監理支援機関の許可要件を満たすこと」
と
「その建物を法律・契約上、事務所として使用できること」
は別の問題
として考える必要があります。
自宅を事務所として使用する場合には、物件ごとに確認することをおすすめします。
9.育成就労実施場所からどのくらい離れていてもよい?
監理支援事業所の所在地について、もう一つ重要なのが、育成就労実施場所との距離です。
監理支援機関には、緊急時においても育成就労外国人の保護等を迅速かつ確実に行える体制が求められています。
そのため、監理支援事業所と育成就労実施場所との間には、迅速に対応できる位置関係が必要です。
その目安として、
監理支援事業所から育成就労実施者の事業所や育成就労外国人の居住地まで赴き、必要な保護等を行ったうえで事業所へ戻るまでの一連の対応が、通常の業務時間内に可能であること
が求められています。
ここで注意したいのは、片道の移動時間について「何時間以内であれば認められる」といった一律の基準が定められているわけではないということです。
実際の交通手段や道路事情等を踏まえて、必要な対応を通常の業務時間内に行えるかどうかが重要になります。
したがって、移動時間が長いことをもって自動的に不許可になる、といった単純な判断はできません。一方で、移動時間が長くても必ず認められるという意味でもありません。個別の場所・交通事情を踏まえて判断する必要があります。
10.監理支援事業所ごとに「監理支援責任者」を選任
監理支援機関の事業所について、人員面で特に重要なのが監理支援責任者です。
監理支援機関は、監理支援事業を行う事業所ごとに監理支援責任者を選任する必要があります。
監理支援責任者は、監理支援事業を適切に実施するための責任者として、監理支援業務を統括する立場です。
なお、監理支援責任者については、単に名前だけを置けばよいわけではありません。
常勤の役員または職員であることなど、所定の要件を満たす必要があります。
また、監理支援事業を行う事業所を複数設ける場合には、それぞれの事業所について監理支援責任者を選任する必要があります。
運用要領では、監理支援責任者が常勤する事業所における業務を適時適切に行っていることを前提として、リモートワーク等により他の事業所における業務に一部従事することは妨げないとされています。
11.監理支援事業所に「常時職員が駐在」する必要はある?
ここは、事業所を複数設置する場合などに特に気になるポイントです。
結論として、現在公表されている運用要領等からは、
「営業時間中、各監理支援事業所に必ず1人以上の職員が物理的に駐在していなければならない」
という明確な要件までは確認できません。
一方で、これは、
「誰もいない事務所でもよい」
という意味ではないものと考えられます。
監理支援責任者については常勤性が求められますし、監理支援機関としても、実際に監理支援業務を適切に遂行できる体制を整える必要があります。
また、監理支援事業所は単なる住所ではなく、監理支援業務を行うための設備・レイアウト・情報管理・来訪者対応等が可能な実体のある事業所であることが必要です。
したがって、
「常時の物理的駐在を求める明文の要件は確認できないが、実際に監理支援業務を適切に行える体制は必要」
と理解しておくのが適切でしょう。
12.常勤役職員の人数は「事業所ごと」ではない
ここは非常に重要なポイントです。
監理支援機関には、監理支援の実務に従事する常勤の役職員を一定数確保することが求められています。
具体的には、申請時点で、
2人以上
監理支援を行う育成就労実施者の数を8で割った数を超える
監理支援の対象となる育成就労外国人の数を40で割った数を超える
という3つの基準をすべて満たす必要があります。
例えば、
育成就労実施者:4者
育成就労外国人:80人
の場合、
実施者数による計算
4 ÷ 8 = 0.5
外国人数による計算
80 ÷ 40 = 2
となります。
そして、
2人以上
0.5人を超える
2人を超える
という3つの条件をすべて満たす必要があります。なお、常勤役職員数は整数で数えるため、「0.5人を超える」という条件は、実質的には「1人以上」であれば満たされます。この例では、3つの条件のうち最も厳しいのは「2人を超える」(=3人以上)という条件になります。
そのため、このケースでは3人以上の常勤役職員が必要となります。
ここで特に注意したいのは、この人数基準は「事業所ごと」に求められるものではないということです。
公表されている資料では、監理支援機関として全体で要件を満たした上で適切な監理支援を行う能力が確保されていればよく、事業所ごとにこの人数体制を求めるものではない、という趣旨の整理がされています。
つまり、例えば岡山事業所と東京事業所の2か所を設けた場合、
岡山事業所に2人+東京事業所に2人
というように、単純に各事業所について最低2人ずつ必要になるわけではありません。
監理支援機関全体として必要な人員体制を確保しているかという点が重要になります。
なお、「監理支援の実務に従事する役職員」には、あっせん、監査、訪問指導を行う職員だけでなく、入国後講習に関する事務や相談対応に従事する職員も含まれます。監理支援以外の業務との兼務も認められています。
13.監理支援事業所を準備する際のチェックポイント
ここまでの内容を踏まえると、監理支援事業所を準備する際には、次の点を確認しておくとよいでしょう。
① 事業所そのものについて
□ 監理支援事業を行うためのスペースを確保している
□ 使用する面積がおおむね20㎡以上ある
□ キッチン・給湯室・トイレ・浴室等を面積に含めていない
□ 事務機器を適切に設置できる
□ 情報管理を適切に行える
□ 来訪者に対応できる場所・動線がある
□ 他の事業者の事業所等と混在していない
□ 他の事業者のスペースを通過しなくても入室できる
② 面談・相談について
□ 個室またはパーティション等で区分された相談スペースがある
□ 相談者のプライバシーを保護できる
□ 隣接する事業所がある場合、動線等についても配慮している
□ 必要に応じて近隣の貸部屋等を確保している
③ 人員体制について
□ 監理支援事業所ごとに監理支援責任者を選任している
□ 監理支援責任者が所定の要件を満たしている
□ 監理支援の実務に従事する常勤役職員を必要数確保している
□ 必要な人員数を「事業所ごと」ではなく「監理支援機関全体」で確認している
④ 立地について
□ 育成就労実施場所まで迅速に対応できる位置関係にある
□ 必要に応じて実際の移動時間を確認している
⑤ 物件の使用について
□ 賃貸借契約上、事務所として使用できる
□ 必要に応じて管理規約を確認している
□ 建築・消防・都市計画関係の規制を確認している
□ 自宅を使用する場合は、居住部分との区分やプライバシーを確認している
まとめ
育成就労制度の監理支援機関の許可申請では、法人や役員、外部監査人などの要件だけでなく、実際に監理支援事業を行う「事業所」と、その事業所を含む人員体制についても確認する必要があります。
特に重要なのは、
事業所として適切なスペースを確保すること
おおむね20㎡以上の面積を確保すること
事務機器・情報管理・来訪者対応等に適したレイアウトにすること
面談・相談の際にプライバシーを保護できること
他の事業者の事業所等と混在せず、独立性を確保すること
育成就労実施場所へ迅速に対応できる位置関係にすること
監理支援事業所ごとに監理支援責任者を選任すること
監理支援機関全体として必要な常勤役職員数を確保すること
です。
一方で、いくつか誤解しやすいポイントもあります。
まず、「20㎡あれば必ず大丈夫」というわけではありません。
実際に監理支援事業を行うためのスペースとして使用されていること、事務機器の設置、情報管理、来訪者対応、相談対応等を適切に行えるレイアウトになっていることが重要です。
また、「常勤役職員の人数を事業所ごとに確保しなければならない」というわけでもありません。
必要な常勤役職員数については、監理支援機関全体として基準を満たしているかが確認されます(一方、監理支援責任者については、事業所ごとに選任が必要です)。
そして、「各事業所に常時1名以上の職員が物理的に駐在しなければならない」という明確な要件までは、現在公表されている資料からは確認できません。
ただし、これは実体のない「住所だけの事務所」が認められるという意味ではなく、監理支援機関として、必要な人員を確保し、相談対応や情報管理、緊急時の保護等を含めて実際に適切な監理支援を行える体制を整えていることが前提となります。
事務所を新たに借りる場合には、単に「20㎡以上あるか」だけを見るのではなく、
「この物件で、監理支援事業所として必要な業務を実際に行えるか」
という視点で検討することをおすすめします。
また、監理支援機関の許可要件とは別に、建築基準法、消防法、都市計画法、賃貸借契約、管理規約などが関係する場合もあります。そのため、物件を契約する前に、これらの点についても確認しておくことが重要です。
※育成就労制度は2027年4月1日に施行される予定であり、2026年9月現在も運用要領等の更新が行われています。実際に許可申請を行う際には、最新の出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の資料をご確認ください。
OIL行政書士事務所
当事務所では、育成就労制度への移行に伴う監理支援機関の許可申請について、行政書士として申請手続のサポートや外部監査人就任を行っています。
